琉球神話の神々シルミチュー・アマミチューが眠る浜比嘉島(はまひがしま)。
今回は、この浜比嘉島で親子でもずく漁を行う島田 誠也さんのお悩みに対し、環境保全活動の研究を行うタナック海さんをパートナーにお招きし、ワーケーション企画を行いました。
本レポートは、そんなお二人の浜比嘉島での出来事を報告します。
≪浜比嘉島とは?≫
沖縄県うるま市に属する人口およそ400名の離島。主な産業は漁業や観光業となっており、海中道路から続く橋をおりて左を比嘉区、右を浜区といいます。琉球開闢の祖である女神アマミキョと男神シルミキョが祀られているアマミチューやシルミチューのある場所としても人気が高く、毎年多くの観光客が訪れています。
相談者:島田 誠也 (シマダ セイヤ)さん<写真左>
まじむじ食品代表。浜比嘉島発のもずくブランドを立ち上げ、世界のもずくブランドに育てることを使命としています。現在のもずく業界に危機感を持ち、自社で加工・販売まで行う6次産業化を展開している。今回はもずく漁に欠かせないサンゴの保全活動やもずく業界全体の今後に関して相談しました。
パートナー:タナック 海(タナック カイ)さん<写真右>
カナダに留学中であったが、サンゴの保全活動を行うため沖縄へ移住。養殖に関する研究を行っていた経験もあり、もずくの養殖やもずくに含まれる成分(フコイダン)に関する知識が豊富で、今回パートナーとして選ばれました。
- ワーケーション1日目:1月21日
14:30~16:30|オンラインヒアリングの内容を踏まえタナック海さんからプロジェクトの全体像に関して共有
この日は浜比嘉島にあるワーケーション施設「LivingAnywhere Commonsうるま」に集合し顔合わせを実施。
オンラインでヒアリングした内容をもとに、タナックさんからプロジェクトの全体像に関する構想が共有され、その内容を踏まえたうえで改めて現状の課題整理が行われました。
島田さんからはもずく漁にとってサンゴがどれほど大事な存在かが話され、持続可能な産業にしていくためにも現在の漁の形を見直し、サンゴを守る活動にも力をいれていきたい旨が話されていました。
浜比嘉島は豊かなサンゴ礁などの自然環境にも恵まれ、もずく漁で発展をしてきた島です。
もずく漁にとってサンゴは欠かせない存在であり、持続可能な産業にしていくためにも現在の漁の形を見直し、サンゴを守る活動にも力をいれる必要があります。
現状の課題整理の後、「ではそんな現在のもずく業界の課題に関して、浜比嘉島でどのようなサンゴ保全活動、ならびにもずく漁に関する認知拡大や需要の増加をおこなっていくか?」が議論され、持続可能なもずく漁の発展のため、漁師である島田さんと研究者であるタナックさんの強みを生かしながら、今後実施可能な施策に関してアイデア出しが行われました。
- ワーケーション2日目:1月22日
10:00|シルミチューにて伝統行事を見学
翌日は10時にLivingAnywhere Commonsうるまを出発し、旧正月を迎える島の伝統行事を見学するためシルミチューへと向かった。
旧正月とは旧暦の1月1日のことを指し、この時期のシルミチューではノロ(祝女)が祈りを捧げたり、奉納舞踊やカチャーシーを住民が踊ったりすることで、健康や地域の繁栄を祈願する風習が残っている。
到着時にはすでに多くの住民やTV局が集まるなか、島の大事な文化が脈々と引き継がれている様子を見ることができた。
10:45|大漁旗の設置
その後は海の安全と豊漁を祈願する大漁旗の設置を実際に体験。島田さんのもずく漁に使用する船に、実際の大漁旗を設置させていただいた。
比嘉漁港には数十隻の船が並び、すべてに「大漁」と書かれた旗や女性の名前がモチーフになった旗が飾られていた。(島田さんに伺ったところ、女性の名前の旗が多いのは海の神様が女性とされていることが由来となっているそうだ)この日は風が強いなか、まじむじ食品のみなさんとタナックさんで力強く旗が飾られ、2隻の船への大漁設置が完了した。比嘉港に並ぶ船が、たくさんの旗を掲げている姿は圧巻であった。
12:00~15:30|浜比嘉島の比嘉漁港にて旧正月に参加
大漁旗設置後は、比嘉漁港にて地元の漁師さんに混じり旧正月の宴に参加させていただいた。
島で獲れた海鮮やオードブル、泡盛が並ぶなか、漁師さんやそのご家族が集まりお酒が交わされていた。島の旧正月では家族だけでなく、親戚、知人、友人などが集まることが文化として残っており、その後は漁師の方のご自宅で宴に参加させていただいた。
観光では絶対にできない経験を島田さんや比嘉のみなさんにさせていただき、地元の方との交流を通して、島の文化や歴史を学ぶとても貴重な時間となった。
15:30|アマミチュー参拝
宴のあとは浜比嘉島にある女神アマミキョが祀られるアマミチューを参拝。
アマミチューは道路沿いにある岩の小島にお墓が作られており、小島の左側にある洞穴が参拝場所となっている。先に伺ったシルミチュー同様、旧正月にはアマミチューでも年頭拝み(ニントゥウグワン)が行われ、ノロ(祝女)が五穀豊穣・無病息災・子孫繁栄などの祈願を行うことが習わしとなっている。
この日は夕方に伺ったため儀式の様子を見ることはなかったが、美しい海を見ながら参拝をさせていただいた。
16:00|島田さんの親戚のお宅にてミーティングを実施
アマミチュー参拝後は島田さんの親戚のお宅に伺い、旧正月の文化に同席させていただきながらミーティングを実施した。
昨日話したサンゴの保全活動やもずく業界全体の未来に関して、今後お互いがどの程度関わり合いながら対応していけそうか?など現実的な部分が多く話された。
18:00|海さんの宿泊先であるLivingAnywhere Commonsうるまへ戻り、滞在者と交流
夜はLivingAnywhere Commonsうるまへ戻り、島田さんと海さんは、LivingAnywhere Commonsうるまの宿泊者と交流を楽しんだ。
LivingAnywhere Commonsうるまは「住む・働く・交流する」をコンセプトに2022年7月にオープンしたワーケーション施設で、全国からフリーランスや会社員などが中長期滞在をしながら仕事や遊びを楽しむ拠点として運営されている。
この日も数名の滞在者がおり、島田さんやタナックさんは実際に滞在者と交流しながら、“外から見た浜比嘉島”について意見を交換する時間となった。
島田さんから話される貴重な島のお話しに、滞在者は興味深く話を聞き入る様子もみられた。
- ワーケーション3日目:1月23日
11:00|比嘉漁港で旧正月の儀式に参加
最終日となった1月23日は、昼から比嘉漁港で行われた旧正月の儀式に参加させていただいた。
比嘉漁港では毎年旧正月になると、ノロ(祝女)と一緒に神棚にお酒やお米などを祀り、海の安全や豊漁などを祈ることが風習となっている。
この日も昼から比嘉漁港にすべての漁師が集まり、伝統的な儀式をみんなで大切にとりおこなう様子がみられた。
タナックさんも島田さんと一緒に儀式に参加させていただき、もずく漁で発展してきた島の産業と、そこで働く人々の思いに触れる時間を味わった。
2泊3日のプロジェクトツアーを終えて
今回のプロジェクト型ツアーは、うるま市浜比嘉島でもずく漁を行う島田誠也さんの活動に対し、海の保全活動を研究するタナック海さんをプロジェクトパートナーにお招きしました。
今回のツアーや議論を通して、もずくの売上を伸ばす為のポイントが整理されました。
①医療的効果の解明、
②アジアに向けた輸出、
③業界の実情、
④資金補強戦略、
⑤マーケティングの強化、
これら5つのポイントを踏まえ、戦略的に売上を伸ばす方策の検討が今後必要となってきます。プロジェクトのなかでは、浜比嘉島を含む勝連半島がもずくの生産において日本一である背景に、恵まれた自然環境と長い年月をかけて作られたサンゴの存在があることがわかり、それらをどう守りながらもずく業界を持続可能な形で発展させていくかが活発に議論されていました。
議論のまとめとして、タナック海さんから今後のアクションプランとして、プロジェクトを実施する上での体制作り、観光ツアー化、ブランド形成等について示されました。
サンゴの保全活動は長期的な視野での取り組みが必要なこともあり、そのための費用をどう工面していくかなどの課題も多いです。タナックさんのアイデアを参考に、今後島のもずく漁が持続可能な形で発展し、自然環境が守られていくことを願います。
▼まじむじ食品
https://www.majimuji-food.com/